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常にクリエイターでいたいがアーティスト傾向が高い人間の考えまとめ。自分が読み返して、面白かったりタメになったりしていますように

幻の女の子

読者の方が女性なら、自身の「幻の男の子」について思いながら、読んで頂けると幸いです。

千葉県八千代市イオンモール。彼はそこでTuvabandと言うアーティストのCDを買ったり、ヴィレッジヴァンガードで気になる作家の雑貨を購入したりして楽しみ、休憩を兼ねてカフェにいるのが好きなため珈琲館の中に入った。
ただ彼は楽しんでいる反面、寂しさは埋められないでいた。

彼がイオンの中にいるのはCDや雑貨を買ったりするためではない。3ヶ月前、彼は女の子と一緒に今いる場所と同じショッピングモールの中で遊んでいた。
初めて彼女と会い一緒にゲームしたり、ここではないカフェで飲んだりして楽しかった。
そして解散する時、彼は「また同じように遊びたいね」と彼女に言った。すると彼女はそれまで穏やかな笑顔をしていたのに対し、急に思いつめた様な顔で横を向いたまま「私がまたここにいるとは限らないよ」と言った。

彼女はその言葉の意味について何も言わなかったが、彼は関係が壊れそうと思って聞けなかった。

それから3ヶ月後、彼は再びこの周辺に行く用事があり、その際に彼女に連絡を取ろうとした。
しかし彼女は唯一の連絡手段のFacebookアカウントは消していた。名前で検索しても同じだった。

消えた理由は分からない。彼は冷静でいるつもりでいたが急激に思い出してしまう。そんな日もあった。
それで彼女の事を思って一人で同じショッピングモールに行く分には、誰にも迷惑をかけないと思ってこうやってイオンの中に入った。

彼は別に彼女をそう言う意味で好きではないと、彼自身は考えていて、それは彼女にも伝わっている事のはずだった。

彼は席を確保してからモンブランとコーヒーを注文した。
しばらくして席に運ばれたモンブランの端をフォークで分けてから刺して食べて、次にコーヒーを飲んでそれぞれの味を楽しんだ。
彼が窓から外を見渡すと大勢の人がいる。こんなに多いから偶然彼女に会う事もないのだろうと彼は思う。

あの彼女は一体何だったのだろうか? 彼はそんなに口上手な方でなく、女の子と遊ぶ機会も今まで一度もなかった。
仕事柄人と会う事はあまりないし、人と接する趣味を特に持たないので彼が女の子とコミュニケーションする手段はネットのみ。

女の子と遊ぶために口上手になってコミニュケーションを取ろうとする事もそれほどなく、自分が楽しいから会話をする。楽しくなかったから会話をしない感じだった。
その中の一人である女の子とネットではない現実の場で会って、会話して一緒に遊んで、楽しく過ごしたと言うのは、夢のような出来事だった。
彼女は確かにそこにいたし、彼女は自分の事を友達として好きでいてくれたはずだった。
でも彼女はそこにいない。彼女の名前をFacebook以外でネット検索しても同一人物だと確定できる人はどこにもいない。

彼女は自分の事を思ってくれる事があったのだろうか? 彼女は今でも自分の事を思ってくれるのだろうか? やはり自分だけの一方通行なのだろうか?

よく分からなくなった。

彼はそこまで思い詰めて考えたら、自分がせっかくカフェにいるのにその楽しさを味わえないと思って、中の装飾を見たり純粋に外の景色を眺めたりする事にした。

店員は忙しく働き、しかし反対に他のお客さんはゆっくりと過ごしている。
外は店内とは打って変わって雑多で明るく、買い物袋をぶら下げた親子や家族、カップルなどがいる。
カフェ内にある雑誌を手に取り、読んでみる。GOODS PRESSの電化製品の特集コーナーは、思わずその商品を自分が使っているのを想像する。

ふと手元にあるCDを見た。中身を見たいと思ったため雑誌を棚に戻した。
CDの中を開けて見る。

すると彼の頭の中である歌が流れた。
それは彼女とカフェで話している時、かかっていた音楽だった。
彼はこの曲が気に入りすぐさまスマホでその曲を検索した。
「ごめん。こう言う曲が好きでそれで」と言うと、彼女は「大丈夫」と笑ってくれた。
それから彼女は別の曲が流れると「この曲も好きなんでしょ? 気になったらどんどんshazamして」と言ってくれた。

だから彼は気になる曲があったらshazamした。そして気になる曲がどんどん出てくるから自動検索設定にすると言ったら、彼女は声を出して笑ってくれた。

彼が気に入った音楽の一部はThis the KitのBullet ProofとTuvabandのUnknown。
それからその曲をダウンロードして、以来時折聞いていた。

昨日も聞いていたし、Bullet Proofは何気ない曲調だけどジワジワ自分の心に浸透する曲だから、彼女の事で思い悩んでいるのは音楽のせいとしながら、曲が好きでまたはまって聞いていた。

そして今日、たまたまTuvabandのCDが見つかったから購入した。
そう言えばUnknownの意味は知られていない。彼女の消失の理由と同じだなと苦笑した。

彼女の消失の理由や、行方を探すためにまたネット検索しようか考える。
しかしその気力も散々したからないと考え直した。

なんだか自分ばかりが思っていて馬鹿馬鹿しい。
それでも頭の中のこの思いを吹っ切ることができない。考えるほど頭の中で流れているTuvabandのUnknownで思考がどこか遠くに行ってしまう。

だったらそうだ。いっそ深く考えたほうが良いと彼は思った。
彼女は心の旅をしていると考えた。彼女も何かでか思い悩んで、俺のことをとうに、どうでも良くなっている込みでも良いから思い悩んでいると。
俺が心の旅を今までの中でしているように、彼女の心の旅を考えようと決めた。
だから彼女が書き込んでいたFacebookでの情報内で探る事にした。

彼女は大学を卒業してからFacebookを始めたと書き込んでいた。
それで時折、第二者と第三者との関わりが疲れると言っていた。
彼女は多分自分の立ち位置が分からなくなった。だからいっそ思い切って位置から離れようと。
Facebookがそんな「第二者と第三者との関わり」と、関係しているかは分からない。
でもネットもいっそ離れたくなったんだろう。リアルではそれがしずらいけど、ネットなら可能と。

彼女と実際にあった時はもちろんネットとかの境を越えていた。
しかし彼女にとってはネットの延長線にしか過ぎなかったのだろう。
実際にFacebookを辞めた事で自分と会っていない。

こうやって心の旅をして離れたのは彼女だけじゃない。高校の頃まで仲良しだった友達や、近所の猫もだ。

自分の場合の心の旅はどうなんだろう?
誰と離れていったのだろう? 少なくとも、本当に仲良くしてくれたはずなのに、自分が触れ合うのを躊躇って離した人が多い。

彼女は前はFacebookに毎日のように書き込んでいた。自分の好きなアニメやゲームの事。音楽グループの事。
それが自分の好きなものだったら返信すると、彼女は嬉しそうにコメントしてくれた。
また彼女は自分の書き込みにもレスしてくれた。

それは真剣な内容。自分の趣味。自分の悩みについてなど、彼女のほうから時折返信して、励ましてくれたりして嬉しかった。
彼女は自分自身にだけ興味がある人でなく、相手についても親身に接してくれた。

そんな彼女と会ってからしばらくして毎日のように更新していた書き込みが途絶えて、時々書く内容が「第二者と第三者との関わりが疲れる」とか「今日は体調不良」とかの内容だった。

書いている内容を見て正直「面倒臭いな。」と思う事もあった。
たまに相談に乗ろうとしても、抽象的なものばかりで情報量が少ないので、そこから引き出して良いのか分からなかった。

でも実際は『関係が壊れるから』と言う予防線を張っていたのあったのかもしれない。
相談に乗ろうと思っても関係が壊れるから前に踏み出せなかったのかもしれない。
しかし深く踏み込もうとしなくても、関係がなくなってしまった。

彼女はもうその辺りから心の旅をしてしまっている事が分かった。
心の旅をしてしまったらその人の気持ちや現状を掴まえる事が難しい。物理的に別の場所に行っているよりも。

彼女はFacebookでつながりのある他の人に、メッセージで嫌な事を言われたのだろうか?
他の人のコメントを見ると別に変な感じは受けない。彼女も普通に、ノリノリで返していた。とは言っても彼女の書き込みにコメントをしていない人もいるわけで、その中とかに距離感を置きたくなった人がいたのだろうか?

「第二者と第三者」はFacebookでつながりを持っている人達の中にいるのか? それとも関係ないのだろうか?
彼女の友達は250人くらいはいた。その中に元々知り合っている人がいた感じだし、自分みたいに接点もなかった人が他にいたと思う。
彼女はもしかするとネットに限らず、色んな人と繋がろうとしていたのかもしれない。その疲れが出てしまったのだろう。

彼はそうやって考えて、半分くらい残っていた冷めたコーヒーを一気に飲み干した。
ケーキはまだ半分ほど残っている。食べながら水をコーヒー代わりにして飲むのも、何だか味気ない。
だからまた同じコーヒーを頼む事にした。

それにしても「第二者と第三者」についてぐるぐると考えている。分かるはずがないのに。
気になってもいたのなら、なぜあの時「どうしたのですか?」の聞かなかったのだろう。
無視されてもそれで良かっただろうし、一回聞く分には悪くなかったはずだ。

実際にメッセージ上でも何度もやり取り出来ていたし、お互い少しは深い話が出来ていたはずだ。

例えば彼女なら自分自身の将来の夢の話。○○していたけど一度挫折したとか、今の壁はこう乗り越えたいだとか。
自分の場合は日常生活の中で毎日こう言った悩みがある。それを解決したいけど心が折れる事が多いとか。逆に少しは前向きにこう感じたとか。

お互い無視せず自分のペースを守りながら相手の事を思って書いていたし、少なくとも自分は彼女と相談した分前向きになれた。

その彼女がいなくなった。相談を受けながらそれが重みになっていたのだろうか? そしたらちゃんとそう言ってくれたら、自分もそれ以上悩みを送る事はなかったはずなのに。

でもどうやってそう言う風に相談し合えるようになったのだろう? 彼はある記憶を思い出した。

それは彼女が毎日のように書き込んでいた頃、ある悩みを具体的に書いていた。
その内容は自分の経験と似ていて、その経験なら別に言っても良い。公に書くには恥ずかしいけど、会った事のない相手に送る分には大丈夫と思って彼は送った。

するとすごく感謝され、それからお互いの少し込み入った話ができるようになった。
その分友情が深まり、他にも色々な話が出来るようになったんだと彼は感じた。

だから自分と彼女との仲はある意味特別。彼女が他の人とそうしてるとか関係なしにその仲は特別だと思った。

そして彼女が住んでいる千葉県の方に仕事で行く事が決まった時に、ダメ元で「会えませんか?」と聞いたら、OKしてくれた。
彼女の方から色々手配してくれて、このイオンで遊ぶ事が出来た。

女の子と言うときめきを持たせつつ、だけど変に性差はない普通の友達として遊べて嬉しかった。

最初に彼女と会った時はお互い緊張していた。
けれどまずあのカフェに入って少しずつ話をしだすと、ネットと同じ仲になった。
それから一緒にゲームをした。
すごく楽しかった。ネットだけで交流していた時より、仲が深まったと感じた。

けれどそれは勘違いだったのだろうか? もしカフェで悪い印象を自分に持ってしまったら、カフェを出てからゲームをしようってならなかったはずだ。

でもこう考えられるかもしれない。彼女はここと同じ千葉県にいるけど、このイオンから少し遠く離れた場所に住んでると言っていた。
だからせっかくここまで来たのだから遊ぼうと思ったのかもしれない。申し訳ないから自分と付き合うと言う感じだったかもしれない。

そしたら自分はこれ以上は会わなくて良い人だから、会わなくなったのだろうか?
そして第二者と第三者との関わりの疲れが合わさって、関係がなくなったのだろうか?

自分が空虚に感じた。こう言った切ない思いをする為に交流してきたんだろうか? 俺はこれから先も仲良しでいると思って交流してきたはずだ。
一体これから先どうすればいいのだろうか? 下心なしで異性を追いかけているつもりでも、その先にあるのは切ない答えばかりなのだろうか?

彼女の思考を考える。みんなに人気のある女の子なら誰かやみんなを一斉に外すのだろうか?
いや人気のあるとか関係ない。なぜなら自分もみんなまではいかなくても、人を外した事はあるのだから。

彼女と仲良くしていた頃でも彼女は毎日まで自分の事は考えていない。もちろんそれで良い。自分だって毎日まで彼女の事は考えていない。
ずっと交流のない人の事をたまに考える時、どうでもいいって思う方が大きいのなら、ふと無意識でも外す事があるのかもしれない。
今の消えたばかりの彼女はそう言った人ではない。彼女の事を思うのはそれは特別な感情のようなものだった。例えば友達一覧から解除する事もないし、存在を頭の中から消す事もない。
彼女はそこまで自分の事は思っていない。

そしたら彼女はたまに自分の事を思っても、どうでもいいと言う割合が強かったのだろうか? いや、でも彼女とメッセージでやり取りしていた時に、「自分と私だけの秘密」と言ってくれた事があった。

俺はもちろんその事は誰にも言わないし文字としても書き起こさないし、そう言う秘密を共有しているのなら「どうでも良くなった」ってあっさりと思わないはずだ。
それとも「自分と私だけの秘密」は嘘で、他の誰かにか言っているのだろうか?

もしくは自分の事が「どうでも良くなった。」「考えない。」と思うくらい大きな悩む出来事があったのだろうか?
やはりちゃんと聞けば良かった。 俺は彼女を心配している。その事はちゃんと伝えられたはずだ。

ひどく後悔が来た彼は外に出たくなった。口に出して言った「私がまたここにいるとは限らないよ」と言う言葉が、正直少しだけ壁になっていたと分かった。
いつの間にかテーブルに運ばれていたコーヒーが飲んでいない内に冷めてしまっている。
しつこくないのと、人の事を思っているを伝えるバランスを上手く取っていたつもりが、関係を壊さない事にすごく意識が向いていた。

しかし彼はケーキとコーヒーを一気に口に収めるのが格好悪いと思って、外の景色と店内の風景を眺めながらゆっくり食べる事にした。
外で歩いていたり、自分と同じ様に店内にいる人達は、みんな何かしらの人との経験をしている。
上手くいくところまでいけたら二人で遊んでいるし、もっと上手くいけばそれが恋人だろうと友達だろうと、何度だって会える。
あの時の自分と彼女は、外から見たら二人で遊んでいる恋人だったし、友達だった。
今はこうやって消えて、性差とかを越えられないただの振り出しに戻っている。

彼女がFacebookで書いてきたことは嘘ではない。仮に自分のページ内で書けるとしても、わざわざメッセージで自分に付き合って嘘を書き連ねる事はない。
それに内容を一つ一つ思い出しても、嘘だと捉えた方がかなり無理が出る。

彼女は不誠実だとも思う。
仮にも自分から相談に乗ったとは言え、そのお礼をしても良かったはずだ。
それとも自分が見ていないだけで、投稿で何かしら書いていたのだろうか?
またメッセージで自分宛てに送っていたのただろうか?

Facebookのメッセージ欄を見る。消えた人のが残るのだろうか?は、ネットで調べるのも正直そこまで気が回らない。
じゃあ帰ったらそうやって自分は調べるのだろうか? いや調べないようにしたい。どんな結果でも傷付くだろうし、そこは時を止めたい。メッセージは印象の形が変わっても記憶の中に閉じ込めておきたい。

それに会ってから明らかに距離感が遠くなったわけではなかった。メッセージや投稿のレスで細かく距離感を見ようとしてももう仕方ないと考えた。

彼女はもういない。
自分がまた性差を乗り越えたいとした時、同じような経験をまたするのだろうか?
彼女を手に入れるにはとにかく行動することと友達は言う。自分は異性の友達が欲しいと言う。
違いは特になくていい。 ただ独占欲はなくていいし相手も自分の事を思って何かしら、重要な所で行動してくれたらそれで良い。

いや、他の人との縁は切っても自分とだけは交流を続けて欲しかった気持ちは、独占欲かもしれない。重要な所で行動してくれたらそれで良いは我儘かもしれない。

魅力的な人ほど誰かがいる。魅力的な人ほどその分悩む事もある。
彼女は多分魅力的な分悩む事もある方で、それでも自分はこうやって考えているんだよと伝えたかった。

友達と言う気持ちで、みんなと同じ様に平等に接したい考えもあった。
こうして消えたけど、それでも何とも思わず冷静に彼女の事を思うのが正解かもしれない。

それしか正解がないのなら、その正解が目の前にあるだけ。俺はただそれとは感情が別にあるだけ。でもその感情もずっと一定ではない。一定ではないものも時間が経つ。

ケーキを食べ終わり、コーヒーを飲み干した彼は会計を済ませて外に出た。