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常にクリエイターでいたいがアーティスト傾向が高い人間の考えまとめ。自分が読み返して、面白かったりタメになったりしていますように

新型コロナウィルス後遺症シナリオ

漫画動画シナリオ作成のお仕事で新型コロナウィルスの後遺症について調べる機会がありましたので、残念ながら不採用となったのですがその際に書いたシナリオを公開します。文字数は4900ほどです。
なお新型コロナウィルスについての症状などは、様々なサイトを参考にしながら書きましたが(もちろん情報元を確認しながらです)、あくまでも物語の資料としてです。
またここに載せる用に登場人物の設定表など幾つか省いています。


○1■画像:病院で治療を受けている知沙
私の名前は片瀬知沙と言います。20代半ばの女性です。
2020年2月、私は新型コロナウイルスに掛かりました
その前後や後遺症の事について、お話ししたいと思います。

○2■画像:飲み会のシーン 8人くらいが密接な距離感でテーブルを囲んでいる。
知沙「綾子、改めて結婚おめでとうー!」
■画像:友人たち、グラスをぶつけて乾杯する。
その月、私は友人の綾子の結婚祝いで飲み会をしていました。
その時は今ほど、新型コロナウイルスについて重く考えていませんでした。

○3■画像:知沙と綾子が感謝し合っている
綾子「ありがとう! 結婚できたのも知沙のおかげ
知沙が励ましてくれなかったら、私伸宏と上手くいってなかったと思う」
知沙「こちらこそありがとう。綾子が前向きになれたから、応援した私も自信が付いたと思うから」
そう言う風に話したりして、私達は楽しいひと時を過ごしました。

○4■画像:外に出ている知沙達。全員マスクを着けている
綾子「コロナウイルスには気を付けてね。今日愛知で出たって言うから」
知沙「そうだね確かに」
言ってる事とやってる事が、今となっては矛盾しているように思えるかもしれませんし、私自身もそう感じます。
だけどその時はまだ、三密や外出自粛も言われてはいない事態ではありました。

○5■画像:自宅のベッドから起き上がる知沙
テロップ『数日後―、』
知沙(頭痛い‥ 熱かな? 一応熱測ってみよう」
■画像:体温計で測り脇から出して表示を見る知沙
知沙(37.04℃‥ そんなに高くない
喉の痛みはないし咳も出てない…。長引いたら休憩時間に病院に行くか)

○6■画像:病院で診断を受ける知沙
病院に行くと医者から風邪と診断され、薬を貰いました。
その時はまだ、新型コロナウイルスとは言われていませんでした。

○7■画像:体温計を見る知沙
テロップ『一週間後、』
知沙(いまだに微妙に熱が続いてなるな…
37.5℃以上が最近多いし、風邪薬ちっとも効いてない)

○8■画像:綾子に電話をかける知沙。
その時初めて不安を覚えるようになった私は、綾子が看護師をしているので電話で尋ねてみる事にしました。
知沙「もしもし、今電話して良かった?」
綾子「うん」
知沙「コロナにかかってないか不安」
私は感じている不調を全て話しました。
綾子「ちょっと今ご飯食べて私に味がするか教えて」

○9■画像:驚いた様子の知沙と急かす綾子
知沙「え?」
綾子「とりあえず早く!」

■画像:冷蔵庫の中など適当に食べ物や飲み物を出して飲み食いする。ただでさえ不安げな表情がさらに強くなった知沙
綾子「どう? する?」
知沙「まったくしない‥。」

○10■画像:突然の変化に戸惑う知沙。
コロナウイルスにかかって味覚症状が出れば、段々しなくなるものだと思いこんでいました。
でも私の場合は突然味がしなくなりました。
それに家に飾ってある花や食べ物のにおいも全く感じないのです。

○11■画像:診察を受けてからのシーン
それから私は知沙の薦めで念の為違う病院へ行き、医師の判断でPCR検査を受け陽性反応が出ました。
元々大きな病気をした事がなく、体力面では比較的丈夫な方だと思っていたのですが、10日ほどで退院になりました。
なお飲み会前後は、マスクをしてなるべく人気を避けて外に出て遊んだり仕事をしたり、家の中で過ごしていました。
感染経路は、不明です。

○12■画像:パソコンの画面越しに
友達「かんぱーい!」
知沙「(無理に笑顔を作りながら)かんぱい!」
■画像:知沙、用意したお菓子を食べたり飲み物を飲んだりする。

退院してから2日後、私は友達とリモート乾杯をしました。
でもその時はまだ味覚・嗅覚障害は治ってはいません。友達に合わせてそうしていた感じです。

○13■画像:友達が人に呼ばれて後ろを向いている時に、素の表情になっている知沙
喜んでくれて退院した私を祝うために、時間を作ってくれた友達には申し訳ないのですが、その時嬉しい気持ちはありませんでした。

テロップ『後遺症1 味覚・嗅覚障害が継続する』

○14■画像:自宅でパソコンを操作している知沙
一週間後、私はリモートと言う形で職場復帰しました。
私の会社は元々オンラインでの仕事に力を入れており、早くでリモートワークを導入出来たきっかけとなり助かりました。

○15■画像:夕方、パソコンの画面越しに上司とやり取り
上司「片瀬さん、9時頃に言っていた資料の件ですが‥」
知沙「あれ? すいません。資料ってどんな内容でしたか? 教えて頂けますか?」
上司「それは昼の12時頃に話しているんですが‥」

テロップ『後遺症2 集中力や記憶力が低下する』

○16■画像:朝方、引き続きパソコンの画面越しに同じ上司とやり取り
テロップ『次の日、』
上司「コロナウイルスのご時世に向けた新プロジェクトの件なんですが」

○17■画像:上司、目がうつろな知沙を見て
上司「もしもし! もしもし!」
知沙「すいません。昨日は早くで寝たんですがなぜか物凄くだるくて‥」
上司「まだお仕事復帰するには早かったのかな?」
知沙「申し訳ありません。今日は早退させてもらいます」

○18■画像:パソコンを閉じた知沙
それから私はパソコンの画面を閉じました。
知沙「アハハハ」
実際に会社に来てないのに早退って、昨日からの薄い受け答えや自分が情けなくなって思わず笑ってしまいました。

テロップ『後遺症3 強い倦怠感で無気力状態になる』

○19■画像:ベッドでうつ伏せになる
それからはしばらく仕事に出られなくって、休みの日が続きます。自分に強い憤りを覚えるようになりました。

○20
知沙「くっ……!」
時々胸の痛みも起こります。そう言うのもあって、私はまともに仕事をする事が出来ません。

テロップ『後遺症4 胸痛が起こる』

○21■画像:
ちなみに綾子には相談していませんでした。
あの時は衝動的に電話してしまったものの、コロナウイルスの対応に追われて 忙しくなっているんじゃないか?と考えると、とても出来なかったからです。

○22■画像:外で足を引き摺るほど必死に歩いている知沙
テロップ「二週間後―、」
通院の日、私は何とかして自分の足で駅まで歩こうしました。
医者にも通院はタクシーを使って下さいと言われています。
ですが何もかも出来なくなっているので、いつも出来ていた何か人間らしい行動をと、無理にでも一つはしたくなっていました。
知沙(足が重い…。でも歩いてたった15分までの道だから…)

効果音:ドサッ(倒れ込んだ音)

テロップ『後遺症5 疲労感が続く』

その後近くの病院まで運ばれました。様子を見ながら一晩過ごし、自宅へ帰りました。

○23■画像:朝方自宅のベッドにて、スマホで自分のFacebookのページ(タイムライン)を見ている知沙。

■画像:スクロールしていた指が次の投稿が目に付き止まる。

(下記の『』は女性の声で)
『前に参加した飲み会の出席者に、コロナウイルス感染者がいた。私達もPCR検査を受けるハメになって迷惑だった。
まったく何やってんだよ。
私は陰性だったが、こっちは未だにネタにされたり差別も受けてるんだ。
辛いのは分かるがこっちの迷惑も分かれ』

○24
知沙「わあああああああ!」
私はこの投稿を見た瞬間、その場で泣きじゃくりました。
Facebook上でも繋がりを持っている友達と思っていた人に、強い憎悪をぶつけられたからです。
相手の怒りも分かりますが、もっと配慮した事をして欲しかったと今でも思います。
テロップ『後遺症6 強い非難を受ける』

○25
それからはかなり孤独に苛まれた気分に陥りました。
もちろん電話やメールなどをしているのですが、体力面の理由もありますが離れて暮らす家族には3月となり、外出自粛となっていたので会う事が出来ません。

これからの事、生きていけるのかさえ分からないほど将来が不安になり、眠れない苛立ちで叫んでしまいたくなる衝動にも駆られていました。

テロップ『後遺症7 不安に苛まれ不眠症にもなる。またうつ病を引き起こす可能性もある』

○26
綾子「知沙! 知沙!」
しばらくして綾子の声が外の方から聞こえてきました。
ゆっくり起き上がり窓を開けると、外側から2階にいる私を見上げる必死な表情の綾子がそこにいました。

○27
知沙「(突然の訪問で逆に冷静になってる感じで)どうしたの? 今病院忙しいんでしょ? 夜だしそれに外に出るなんて…」
綾子「いいから! 精神的にすごく追い込まれてる友達に会い行くのは、不要不急の外出にはならないでしょ?」
■画像:「うん」と言った感じに首を縦に振り目に涙を浮かべる知沙
綾子「他の友達や家族には会えた?」
■画像:引き続き目に涙を浮かべながら首を大きく何度も横に振る知沙

○28■画像:同じ様に涙を流す綾子と、引き続き会話をする知沙。
綾子「アパートの住民や職場とかに何か言われたり、意地悪されてる?」
知沙「(■画像:溜めていた涙をポロポロ流しながら)されてない」
綾子「(■画像:同じく溜めていた涙を流しながら)良かった…、ネットの中だけで済んでまだ良かったね…
(■画像:泣きながら)ごめんね…、看護の現場だったらちゃんと近くで会えるのに……」

○29
知沙「(■画像:涙を流して笑いながら)病院みたいに衛生管理が整ってない所で…、防護服とか着てないのにしょうがないよ……」
綾子「(■画像:涙を流して笑いながら)そうだけどさ……」

私と綾子は泣き明かしました。窓を開く音がしたのですが注意をしなかった住民達には今でも感謝しています。

○30■画像:会社内で皆と同じ様にマスクをしながら、元気に上司に挨拶してる知沙※ソーシャルディスタンスを保ちながら少人数です。
私は綾子が自分の家庭や仕事があるにも関わらず、そうやって来てくれたおかげで大分助かりました。
集中力や記憶力は無事改善されています。味覚・嗅覚障害は無くなり倦怠感や無気力、疲労感も前ほどではありません。職場に復帰する事が出来ました。
胸の痛みはまだ続いています。ですが以前よりも前を向けているのは間違いありません。

■画像:元気に外を歩いている知沙。
以上が、私の場合の新型コロナウイルスにかかった前後の経緯と後遺症です。自分より苦しんでいる人はもっと沢山いると思います。
withコロナ時代と言います。私のように新型コロナウイルスが治ってもその後遺症を引きずったまま、これからの日常を過ごすと言う人。
そんな人が大勢いると言う意味合いにもならないようにと、願って止みません。